未熟な甲虫の呟き

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「薄紅まといて」 裏話的な何か

送り雛は瑠璃色の」という一冊の本があります。

 もう何年も前の事です。兄弟の本棚に並んでいた沢山のゲームブックの中、「剣」とか「魔法」といった西洋風ファンタジーな文字列にまぎれた和風なタイトルに、ふと目が惹かれました。

 ゲームブックというのは、物語に分岐があって、「○○するなら5へ」「△△するなら13へ」みたいにランダムにページを進めるマルチエンディングな本……と認識していますが、実際のところはどうなんでしょうね? 基本的に、「本棚にあったから読んだ」という受身な私なので、ゲームブックとはナニか、なんてあまり良く知らないのです。
#だいたい、「サイコロを振って五が出たら……」なんて条件でサイコロ使った事なかったし。適当に「五、という事にしよう!」で、バッドエンドに至れば、もう一度選びなおしたりして。(駄目やん)

 ライトな学園物っぽい雰囲気で、物語は始まりました。調子の良い友人、気丈な女友達、そしてミステリアスな長い髪の少女。読者が選んだ選択肢が主人公の少年を動かす事になるのですが、ゲーム性よりも物語性を強く感じた憶えがあります。選択肢のセンテンスも、普通の小説みたいに読み応えがあって、私はみるみる物語に引き込まれていきました。

 かはたれどき、ひるまえ、ひるなか、たそかれどき、……旧い名で刻まれていく時間の中、ごく普通の日常が、少しずつ、少しずつ、綻んできます。四つ辻に迷いながら、和歌に詠まれた謎を追う主人公達が辿り着くのは、一体どちらの岸辺なのか……。


 細部は忘却の彼方ですが、文章の端々から立ち上る幽玄な雰囲気は今でも忘れられません。印象的な情景の幾つかは、目を閉じれば未だに瞼の裏に浮かび上がってきます。
 先を見通せない頼りなげな四つ辻。
 唇に朱をひいたような長い髪の少女。
 じわりじわりと日常を侵食するなにものか。
 ……ここまで書かずとも、気が付かれる方がいらっしゃるのではないでしょうか。「薄紅まといて」を構成するいくつかの要素は、かつて私が心を奪われたこの本に由来しているのです。


 でも。
 実は、つい一年半前まで、「送り雛は瑠璃色の」の事を私はすっかり忘れていました。
 ネサフ中の何かの拍子に、この本が復刊されるという記述を目にして、その瞬間に前述したような記憶が一気に自分の中に甦ってきたのです。
 自分でも驚きました。良く考えたら、「薄紅まといて」ばかりかサイトの名前も、別館ブログの名前も、思いっきり「送り雛……」と同じ方向性だけど、これはもしかして無意識のうちに影響を受けていたって事なのだろうか、と、勝手な自己分析をしてしまうぐらいにびっくりしたものです。

 旧版は絶版との事で、上のリンクページでは、なんと、いちまんごせんえん、という値段が付いています。
 復刊のしらせを知って、直ぐに新版は購入したのですが、Amazonのレビューを拝見するに、どうやらエピソードがところどころ改稿されているみたいで、昔の記憶が上書きされてしまうのが怖くてまだ読んでいません。
 なので、この記事を書こうとしても、具体的な文言が出てこなくて、雰囲気と憧憬しか語れない私です。
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