未熟な甲虫の呟き

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WEB小説リンク集(2007年~17年版)

 サイトのリンクページを整理しました。
 WEB小説に関しては、これまで作品単位でご紹介していたものをサイト単位に変更しました。

 で。せっかくの萌え語りを消してしまうのも勿体ないので、現在リンクが生きている分だけ、ここにまるっと転記しておきます。今のサーバに引っ越してから2017年までの記録です。ここ数年、忙しくて全然更新できませんでしたね……(´・ω・`)
 スキコネクトにも登録してはいるものの、萌え語りまでは手がまわらず。時間と脳みそに余裕があれば、あの作品やこの作品についても熱く語りたいところなのですが。
*   *   *
蝶を吐く
 作者:狼子 由 様
 掲載サイト:小説家になろう
カラフルでも歪だったり、単彩でも完璧な形だったり、それぞれの才能を、そして個性を見せつけるかのように、パフォーマー達は口から蝶を吐く。それがこの世界で最も人々にもてはやされるエンターテイメントなのだ。
冒頭で披露される、街一番の腕前を持つオリエのパフォーマンス。彼のマネージャーであるジェラとともに幻想的なステージに心を奪われていたら、ほどなく、それまでの認識をダイナミックにひっくり返されました。一瞬にして再構築される、新たな世界の姿。蝶を吐く、という行為に託されたもの。独特の世界観にあっという間に呑み込まれました。
オリエとジェラの夢を、友情、愛着、嫉妬といった様々な想いを乗せて宙を舞う色とりどりの蝶の、なんと美しいことか。我々の現実とは似て非なる世界で、我々と同様に悩み惑う彼らの姿から、目が離せません。


EARTH FANG
 作者:石燈 梓 様
 掲載サイト:The Spirit of the Mystic Valley / 小説家になろう / カクヨム
シベリア風の世界を舞台に、異なる文化・価値観を持つ二つの民族が出会い、衝突し、どうしようもない状況に陥りながらも、それでもより良き未来を求めて足掻く人々の物語です。
森を敬い、森を構成する一員として大自然に寄り添うようにして生きる森の民に対して、比較的温暖な南方出身の、森を切り拓き大地を耕し、大自然をも征服しようとする開拓者達。王の使者として少し遅れて開拓団に合流したマシゥは、森の民の狩人ビーヴァと親交を結び、彼らの生きざまを理解してゆく……のです、が。
丁寧な筆致が、人々の生活や文化、信仰をあますところなく描き出すと同時に、血なまぐさい民族間の対立を容赦なく眼前に突きつけてくれます。寒冷地の厳しくも豊かな森の景色も、まるで目に見えるよう。
人と自然との関わりを描いた壮大なる叙事詩、堪能させていただきました。


アイオライトの心臓
 作者:識島果 様
 掲載サイト:小説家になろう / カクヨム
故郷の地に埋められていた禍の種を一身に引き受けた少年ロクドと、あまり他人と深く関わろうとしない魔術師カレドアが、ひょんなことから結んだ師弟の縁。光纏う不思議な少女との邂逅を経て、そこにもう一組の魔術師師弟の軌跡が重なり、やがて呪いの謎は、五百年前に葬り去られた悲劇を炙り出す。
瘴気の大平原、光の神の加護を受け何百年と回り続ける風車、ひたひたと近づいてくる恐るべき奇病、悲劇、そして破滅。物語そのものもとても好みですが、それを支える世界観にも興味を惹かれました。カレドアが魔術についてロクドに語る場面の、なんとわくわくすることか!
それに加えて、登場人物達がまた魅力的で。師弟コンビのなんとなく血圧低めな関係は言わずもがな、例の魔術師の兄弟弟子コンビのバディっぷりにも心臓を射抜かれました。いやあ、いいわあ、むっちゃ好き。
読み応えたっぷりの正統派ファンタジー、とても美味しかったです。


金枝を折りて
 作者:風羽洸海 様
 掲載サイト:小説家になろう
神のちからを用いて政を執り行う王。その後継者は世襲に依らず、ちからの器たるべき資質によって決定される。類稀なる能力を見出され跡目候補の一人として選ばれたシェイダールは、神を信じないがゆえに初めのうちこそ反発するものの、人々の幸せのために、大切な人の命を守るために、いにしえの秘術の謎に立ち向かう。
ともに苦難を乗り越え信頼を築く主従の他、登場人物達がとても魅力的で、各所で萌えツボを突かれまくりました! が、やはり特筆すべきは、色や音、《詞》を使う神秘の術、ウルヴェーユ(彩詠術)。読むほどに、見えるはずのない「ちから」がまざまざと脳裏に浮かび上がってくるようです。
信仰と人智と、感情と理性と。物語を楽しみながらも、神秘のわざが炙り出す幾つもの命題を考えさせられずにはいられません。
激動の果てに迎えたラストシーン、かつての彼らの姿が思い出され、目頭が熱くなりました。


白痴のダンテ
 作者:室木 柴 様
 掲載サイト:小説家になろう / カクヨム(加筆版)
〈悪魔の音楽〉を奏でるというジャズバンド・オーリム。機会を得てオーリムの末席に加わることになった伊達は、並々ならぬ彼らの音楽への情熱にあてられながら、才能を開花させてゆく……のだが。
時に激しく、時にひそやかに、端正に、狂おしく、恍惚と歓喜の声を上げる楽の音。ひたひたと足元に忍び寄る不穏な気配。「全ては音楽のために」との囁きとともに伊達に突きつけられた、恐るべき選択肢。バンドメンバーの過去を、オーリムの真実を知った伊達――ダンテ――が、おのれの道を見出し、真っ直ぐに進んでいく姿に胸が熱くなりました。
物語そのものにも心が惹かれましたが、それと同じぐらい、文章にも心を揺り動かされました。まるで本当に音が聞こえてきそうな演奏の描写。音を読み手の脳内に呼び覚ますように描き出すばかりか、音楽に対する想いや思想をも含めた「音」の一切合財を、これでもか、と読み手に突きつけてくるがごとき文章は、鳥肌ものです。
音楽家への、そしてあまねく表現者への、愛溢れる物語、ご馳走さまでした!


雑種の少女の物語
 作者:東雲佑/右 様
 掲載サイト:小説家になろう
恐怖と絶望に蹂躙された少女は、狂気を供に魔の森へと迷い込む。
「語り部」の穏やかな語り口とは裏腹に、物語の始まりはあまりにも衝撃的です。控えめな描写にもかかわらず、なまじ文章が流麗なだけに、おぞましい出来事はするすると脳内に注ぎ込まれ、脳裏に結ばれる情景は目を背けてしまいたくなるほど。
ですが、仄かな明かりがひとつ、ふたつ、と地下迷宮の中に灯り始めるにつれ、みるみるこの物語の虜となってしまいました。
闇は光に、不幸は幸せに、恐怖は愛に。白虎や山羊頭といった魔物達が素敵でね。いわゆる冒険者として相対したらば、死ぬほど恐ろしい敵のはずなのに。人間と魔物、異なる二つの価値観のはざまで穏やかな日々を送る「雑種の少女」の可愛いこと。
やがて運命の歯車が軋みながら回り、物語は容赦なく終焉を迎え、そうして気づくのです。誰もが――読者であるはずの自分さえもが――物語の登場人物となっていたことに。……うわー、やられた。気持ちよく、してやられた。ほんと最高。
嗚呼、「雑種の少女」に幸あれ!
 
この物語は、前にご紹介した「図書館ドラゴンは火を吹かない」の前身ともいえる作品だそうです。図書ドラが気に入った方は是非こちらの物語も読んでみてください。でもって、図書ドラ未読でこの物語が気に入った方には、全力で図書ドラをお勧めしますぞ。


王たちの機械
 作者:谷口由紀 様
 掲載サイト:小説家になろう
一度は滅びかけた「人間」が再び甦りつつある世界、「機械」の領域に立つ「脊柱」という名の塔に挑む少年と少女の物語です。
「精神」を持ち得ないがゆえに「精神」を持つ人間に執着し、「精神」を奪い取る「機械」達。「精神」を奪われた「人間」は、不可解なちからで肌を剥ぎ取られて死んでゆく。そんな理不尽で恐ろしい敵でしかなかった「機械」ですが、謎が明かされてゆくにつれ、恐怖はその矛先を変え、容赦のない現実がじわじわと腹の底を冷やしてゆきます。
精神とは、意思とは何なのか。何が人間を人間たらしめるのか。砂嵐の中にそびえ立つ、緩やかなS字を描いて天と地を繋ぐ塔、の映像がとにかく印象的で。センスオブワンダー、たっぷり堪能させていただきました!


魔女の愛弟子
 作者:井川林檎 様
 掲載サイト:小説家になろう
師である西の大魔女を追って旅に出た、「愛弟子」ルンペルシュティルツヒェン、通称ペル。名に縛られ、役目に縛られ、一心に師を追い求めるばかりのペルが、色んな人々の「依頼」に触れるうちに、少しずつ人の想いを、そして自分の想いを知ってゆく。そのたどたどしい足取りを、応援せずにはいられません。
旅の道連れとなった東の大魔女ゴルテンとの、どこか危なっかしいやりとりにも、目を引き付けられました。
貴石のちからを持つ「魔女」、愛弟子の元に届けられる「依頼」、読み取られる運命の縮図、道を踏み外した「闇」、そして、「世界」の秘密。幻想的な物語に加えて、肌で感じるがごとき魔法の描写がたまりません。人々の生活感あふれる町々の様子も読み応えたっぷり。
ウイスキーの薫り漂う、大人のための童話です。


響空の言祝 きょうくうのことほぎ
 作者:青嶺トウコ 様
 掲載サイト:コトカゼ / 小説家になろう / カクヨム
一族のアイデンティティとも言うべき歌が上手くうたえず、自分の居場所を見つけられずにいたハフリ。自由闊達に見えて、その実、天候不順から村を救うという使命に縛られたソラト。そんな二人が、惑い、傷つきながらも、おのれに依って立つに至る物語です。
文化や自然の描写が鮮やかで、旅行記をめくっているような心地になったり、主人公やその友人達の悩み多き様子に、青春小説を読んでいるような気持ちになったり、……そして、怒濤のクライマックスにはファンタジー心もガツンと揺さぶられました。
小説という文字媒体を目で追っているにもかかわらず、読んでいて聴覚を刺激されるような気がしてならなかったという、不思議。歌鳥の民の癒やしの歌は勿論、風の音や笛の音など、「音」が強く心に残った物語でした。


女神の柩
 作者:風羽洸海 様
 掲載サイト:小説家になろう
壮絶な時を紡ぐハイファンタジー。一話の前書きに「ハッピーエンドにはなりません」とあるとおり、読み進めるほどに、もどかしさと、やりきれなさと、悲しみに、胸をかきむしらんばかりになります。
ですが、結末が幸せか否か、というのは、あくまでも登場人物の物差しで判断してのこと。そして、この話はそういうスケールで見るべき物語ではありません。言うなれば、「世界に呑み込まれる」醍醐味を味わう物語。彩詠術を始めとする独特の世界観も素敵でね、本当に、これぞファンタジー、って感じがたまんなくてね!
静かに積み上げられた全てが一気に崩れ落ちるクライマックスには、涙腺決壊と同時に鳥肌が立ちました。ああもう、ヤラレタ。見事に心を持っていかれました。


図書館ドラゴンは火を吹かない
 作者:右 様
 掲載サイト:小説家になろう
物語好き、本好きならば、喰いつかずにはいられない、ストーリーテリングという魔法。その威力たるや、物語の外側にいるはずの我々読み手すら、虜にしてしまうほど。複数の時間軸を自在に行き来する語りに、心地よく踊らされます。
少女の姿に身をやつした火竜と、その「親友」である比類なき語り部の、絆の深さに何度も泣かされたかと思えば、因縁の宿敵「左利き」のアンビバレンスに萌えいやむしろ燃え、「相棒」の空気を読まないハイテンションっぷりに癒やされ(ええ、大いに癒やされ)、そして何より美しい文章そのものにも酔いしれました。

書籍化されました! 紙の本として是非お手元にどうぞ!


惑星ファルファーレ ―星の雨が降る海―
 作者:守分結 様
 掲載サイト:小説家になろう
地球外惑星への移民、超能力者、そして冒頭から天地《あめつち》を揺るがす流星の災禍。実にSFらしい超現実的な世界を舞台に展開するのは、しっかりと地に足をつけた、人々の物語です。
三百年に亘って、ちから持たざる者と隔絶して暮らしてきた孤島コラム・ソルの住民達の、独自の価値観や暮らしぶりにとても興味が惹かれました。同時に、そこから足を踏み出そうとする少年サッタールの姿にも。
幾つもの思惑が入り乱れる中、サッタールに忍び寄る魔の手とは。対するアレックスを始めとする海軍の皆さんが格好よくってねえ。手に汗を握りながら、夢中になって読み通してしまいました。


「デビィ&レイ」シリーズ
 作者:まあぷる 様
 掲載サイト:小説家になろう
とある理由でモンスター達が人間に紛れて存在する、パラレルワールド・アメリカ。異形のものどもに脅威を感じた人類社会は、モンスターを狩るハンターという存在を合法化した、んだけど、でもちょっと過剰防衛じゃないの、という世界で生き抜くモンスター達の物語。
クールで見た目も美しく、文字通り超人的な能力をふるうレイですが、12歳まで人間として育てられたせいもあるのか、時々やたら人間臭い面が顔を出すのが素敵です。ギャップ萌え!
対するデビィは、不幸な事件に巻き込まれるまではフツーに大学生をしていただけあって、基本はフツーの青年で、でも、ここぞという時にはタフさを発揮するナイスガイ。
題材が題材ですので、ちょっと血が吹き出したり腕が飛んだり内臓がはみ出たりすることがありますが、アメリカドラマやバディものが好きな人にお勧めです。


21時のサウナルーム
 作者:迅本 洋 様
 掲載サイト:憧憬アンプ
彼女にフられ、傷心を癒やすべくスーパー銭湯にやってきた「俺」を待ち受けていたのは、「サウナの神様」だった……。
その場に居合わせた五人の男達の目の前で、なし崩し的に切って落とされる、戦いの火蓋。暑苦しくも熱き勝負の行方や如何に。端々に遊び心の効いた軽やかな筆致に、するすると読み進めていくうちに、気がつけば感動の渦に呑み込まれてしまっていました! まさか、サウナで汗を流す全裸の野郎の姿に、涙することになろうとは……。
楽しく読んで、ほろりとして、あとがきまで美味しくいただきました。ご馳走さまでした。


六條院の娘たち
 作者:風花こはる 様
 掲載サイト:小説家になろう
舞台は、1970年代の日本。「成り上がりの大金持ち」六条家の娘達に持ちかけられる、家同士の縁組の中で、自らの幸せを模索する彼女達の物語……なんて、通り一遍の説明では、このシリーズの魅力は語りきれません。
我が身に降りかかる困難を、その芯の強さで乗り越えていく六条家のお嬢さん達が素敵なのは勿論のことですが、何より、彼女達の父親、六条源一郎という存在が、とてもいい味を出しているんです。彼の行き過ぎた親馬鹿が引き起こす騒動が、この物語の要だと言っても過言ではありません。
焦れ焦れしたりほのぼのしたりする恋物語の間に差し挟まれる、企業経営にまつわる話もとっても面白いです。


みなぎる豆腐小僧
 作者:ろく 様
 掲載サイト: / 小説家になろう
堅実に、そしてリズミカルに綴られた文章には、全く隙がありません。そんな端整な文体で書かれた、渾身のアホ話(褒め言葉)です。これぞ究極のギャップ萌え。ストイックにふざけてみせる絶妙なさじ加減が、とっても心地よいです。
読んでいて、本気で声を出して笑ってしまいました。もう、最高。大好き。
(サイトトップから、NOVEL→短編→和風 に掲載されています。同じシリーズに「垢舐めが自重しない」と「ろくろ首が荒ぶっている」があり、どれもとっても面白いです)


〈ローズ〉の末裔
 作者:suzu3ne 様
 掲載サイト:CloudCollector'sVector (2CV) / カクヨム
とにかく、冒頭の幻想的な風景に、ガツンと衝撃をくらいました。氷の大地、朱に染まる地平線、蒼黒い空に黒い雲、そして〈ローズ〉。ああ、これぞセンス・オブ・ワンダー!
〈案内人〉とは、〈審判者〉とは何者か。読みやすい文章と息をつかせぬ展開に心を奪われ、一気に読み通してしまいました。夜の世界をゆく人々の生きざまに、思うさま胸の奥を揺さぶられます。


天空の彼方
 作者:石田 累 様
 掲載サイト:天上の藍
近未来、突然変位のように現れたベクターと呼ばれる新生種と、現人類である在来種との間に生じた軋轢が、戦争という形で人々の目の前に噴出。個人と国家、更に種としてのそれぞれの思惑に翻弄され、迷いながらも、夢を、存在意義を求めて足掻く人々の姿から目が離せません。
SF仕立てのバイオテクノロジーネタ(好物です)も、航空自衛隊や警察といった戦う組織のハードな描写(大好物です)も、読み応えたっぷりで、時間を忘れて物語を追ってしまいました。冷静に計算された物語の容赦のなさといったら、登場人物の置かれた理不尽な状況に、何度歯軋りし涙したことか。世界をまたにかけた、壮大なラブストーリーに大満足です。


タブレット搭載アンドロイドを購入してみました
 作者:モギイ 様
 掲載サイト:モギイの森
アンドロイド搭載タブレットじゃなくて、タブレット搭載アンドロイド。タイトルばかりか章の見出しも凝っていて、頭のてっぺんから尻尾の先まで気の利いた物語です。(残念ながら尻尾は附属していないようですが)
最初は脚本形式にちょっぴりとまどったのですが、いざ読み始めたら全然気にならないばかりか、二人(一人と一台?)の声が聞こえるかのようなテンポの良い会話に、すっかり嵌まり込んでしまっていました。
お互いにかみ合っているような、かみ合っていないような、そんな二人(一人と一台)が面白くて、楽しくて、一気に最後まで読んでしまいました。うぃーん、と「言う」タブ君が最高です。


和菓子さま 剣士さま
 作者:鹿の子 様
 掲載サイト:小説家になろう
部活に進路に悩む高校生の日常を描く、青春群像です。丁寧でしっとりとした語り口が、まさしく上品な和菓子のようで、もう、いくらでもおかわりしたくなります。
特筆すべきは、穏やかでおっとりとした慶子さんの、最強天然ぶりです。嫌味も無ければ、わざとらしくもない、読み進めるほどに、慶子さんが慶子さんである事に深く頷き、そしてホロリとさせられてしまう。そんな彼女の目を通して見た世界の、なんと愛しい事か。
全編を通じて慶子さん視点の情景にもかかわらず、他の登場人物の心情が読み手にきっちり伝わってくるのが、また素晴らしくて。彼女ならではの独白も合わせて、隅々まで楽しませていただきました。


夏の女王
 作者:いすず 様
 掲載サイト:鈴の鳴る場所呟きの歌 R18
ほんの少しだけ未来――いつ現実と重なってもおかしくない、未だ来たらぬ世界――のお話です。
静かに語られる、夏の思い出話。見慣れた懐かしい風景が、少しずつ、少しずつ、既知のものから乖離していくさまに、すっかり虜になりました。淡々とした文章に変わりはないのに、途中訪れるカタルシスはあまりにも劇的で、一瞬にして鳥肌が立ちました。今でも、思い出すだけでみぞおちの奥が締め付けられるような気がします。
ぎらぎらとまばゆい日差しの中、紆余曲折の果てにそれでも前を見つめる主人公の姿が、とても美しいです。
昔懐かしい翻訳SFを彷彿させる雰囲気も、もろにツボに嵌まりました。


ノヴァゼムーリャの領主
 作者:文野さと 様
 掲載サイト:小説家になろう
ファンタジーでも、魔法などの超常的なものは出てこない、どちらかといえば架空の国を舞台とした、ヒストリカル・ロマンスに近い物語です。
数奇な運命に翻弄された者と、凄惨な過去を背負った者が、出会い、心を通わせてゆく様子を縦糸に、人々の生きざまや隣国との戦争が織り込まれて、見事なタペストリーを作り上げています。特に、北の大地とそこに暮らす人々の様子が筆致豊かに描かれていて、風景描写オタクとしては、それだけでもう大満足ですよ。
歳の差ロマンスの他、主従関係だとか、暑苦しい男の友情だとか、手に汗握る剣戟とか、萌えドコロいっぱいです。


愛などない / 30度の傾斜角
 作者:呉ノ 朱人 様
 掲載サイト:呉ノ朱 R18
「愛などない」と「30度の傾斜角」。この二つは、二人の出会いにまつわる出来事を、それぞれの視点で描き出した、表裏一体の物語です。
同シチュエーションを男女双方の視点で描く手法は、決して珍しいものではありません。語り手の視野を狭める事で、お互いの人物像にそれぞれ齟齬を生じさせ、「あの時コイツってばこんな事を思ってたんだ」的な意外性をもって、読者を引き込む技法です。
ところが、この二作の場合、それぞれ主人公の目を通して物語が展開しているにもかかわらず、相手の心情が読み手にも充分伝わってくるのです。まず、これが凄い。どちらを読んでも、一乃さんは一乃さんであり、白倉氏は白倉氏なんです。お互いの表情も、そこから読み取る事の出来る感情の起伏も、二つの作品でブレる事はありません。
なのに、「30度の傾斜角」を読んだ途端、世界の奥行きが一気に広がるのです。白倉氏の人物像にしても、過去について筆を割かれた文字数以上のものが、彼の背後から感じ取れるのです。とにかく、凄い。単純に双方向の視点で物語が二本分、ではなくて、もっともっと沢山の物語が相乗効果で生まれてくる、それが凄い。
とにかく、予断無しで作品世界に浸っていただけたら。と、いつもにも増して抽象的な紹介文で失礼いたします。


フライディと私
 作者:ページのP 様
 掲載サイト:P Is for Page(R18/全年齢向け) / 小説家になろう
軍人で先輩遭難者の「フライディ」と、高校生の「ロビン」。運命的な出会いを経てバディとなった二人を描くシリーズの、一番最初の物語です。
一人称という、表現に制約のある手法を使っているにもかかわらず、語り手を取り巻く周囲の気配さえも描き出す、その手腕。全編から漂う、翻訳小説のような雰囲気にも思いっきり酔いしれました。
と、書き手としての野暮な視点はこれぐらいにしておいて。
とにかく、勝気で何事にも真っ直ぐなロビンと、彼女に頭の上がらない(という状況を楽しんでさえいる)フライディのやり取りが楽しくて仕方ありません。シリーズを通して、読めば読むほど幸せな気分になれる素敵な物語です。


ギャラクシー・シリーズ
 作者:BUTAPENN 様
 掲載サイト:ABOUNDING GRACE / 小説家になろう
時は23世紀、漸く火星への入植が軌道に乗り始めた時代の物語です。SF要素とロマンス要素の絶妙なバランスの元、魅力溢れる登場人物達がこれでもか、と物語を盛り上げてくれます。
主人公の二人は勿論、キャプテン・ミカミの指揮する一癖も二癖もある部下達の存在感といったら、話を読み進めるほどに彼らが本当にどこかに生きているんじゃないか、と錯覚してしまいそうになるぐらいです。生命の危険と隣り合わせに宇宙を渡る彼らの格好良さたるや……!
ニヤニヤ、ワクワク、ハラハラ、ドキドキ、させられた挙句に、クライマックスでは本気で泣いてしまいました。全編に散りばめられた諸々を、最後にぐぐぐっと纏め上げる手腕は、素晴らしいの一言です。


ツーリングを少々
 作者:ページのP 様
 掲載サイト:P Is for Page(R18/全年齢向け) / 小説家になろう
どこか泥臭く、体育会系で、それでいて爽やかでカッコイイ。この話を読んで先ず思ったのが、「私もバイクに乗ってみたいかも」でした。
ある日突然「バイクに乗ろう」と思い立った珠緒が、おろおろしながらも免許を取り、ツーリングに出かける。他愛も無い人生のひとコマに、こんなにも沢山のモノが詰まっているという事にはっとさせられました。過不足の無い文章の見事な事、情景がすうっと頭に入ってくるのも感動です。
特定の車種の名前を出さない、という作者様のコメントに、同じ事を考える人がいた、と一人喜んでいたのはここだけの話です。


王都警備隊
 作者:風羽洸海 様
 掲載サイト:小説家になろう
「元気で威勢のいい女子」萌えとともに、戦う組織萌え、謎解き萌えのど真ん中を見事に射抜かれてしまいました。とにかく登場人物達が魅力的で、主人公リーファは勿論のこと、彼女に振り回される王達が愛しくて仕方ありません。彼らが繰り出す軽妙なやりとりに、バディ萌えまで刺激される始末です。
そして、生き生きと描かれているのは人物だけではないのです。街角の景色は勿論、辺りを渡る風のにおいさえも紡ぎだすのは、癖の無い、でも味のある文章。するすると頭の中に入り込んできて、読み始めたら止まらなくなること必至です。


忘れてしまおう
 作者:呉ノ 朱人 様
 掲載サイト:呉ノ朱 R18
「君が好きでした、とてもとても。けれどもう、忘れてしまおう。」
冒頭のこの一文を読んだだけで、見事に心を持って行かれました。
若名千鶴がふとしたはずみで学校の下駄箱で見つけた紙片に記されていた、恋文。僅か数文字のその文章が、彼女と、彼女を取り巻く人々との関係を、静かに静かに変化させていきます。
恋に恋する年代の、どこか夢見がちで、そのくせ妙に現実的な複雑な気配を、しっとりとした筆致が見事に描き出しています。何よりも特筆すべきは、その恐るべき構成力! 読み進めるほどに、鳥肌が立つ思いに襲われました。


山茶花
 作者:Y 様
 掲載サイト:Y's Page R18
江戸の町、岡っ引きの辰次が見かけた娘は、思い詰めた様子で池のほとりに立っていた……。
かつて朗らかな少女だったお峰に訪れた、ふとした出会い。得体の知れぬ胸のざわめきが、次第に恋情へと変わってゆくさまが、細やかな筆致で綴られています。言葉一つ一つを注意深く選んで組み上げられたであろう文章は、流麗、の一言。浮かび上がる情景は勿論のこと、文字の並びにすら、酔いしれずにはおられません。


王室繁盛記
 作者:RIF 様
 掲載サイト:Romance in Farce R18
「剣も魔法も出てこない仮想歴史恋愛小説」とサイトの説明文にもあるとおり、架空の世界を舞台にした、ファンタジーと言うよりもヒストリカル・ロマンスと言う方がしっくりくる雰囲気のシリーズ物です。
コメディタッチな物語には、つい声を上げて笑いそうになり、シリアスな物語には、息を呑んで文字を追い続けてしまいました。
抑制の効いた言葉の奥に垣間見える、物語や登場人物に対する深い愛が、より一層読み手をお話の世界へと引き込んでくれます。
一筋縄ではいかない登場人物達の中でも、個人的にアンヌ姐さんが大好きです。「愛」と「陰謀」の同居具合が素敵過ぎます。


朝焼色の悪魔
 作者:黒木 燐 様
 掲載ブログ:Heaven or Hell 小説館 R18
新種のウイルスによるバイオテロと、それに立ち向かう人々の物語です。
題材が題材だけに残酷な場面も現れますが、タフで魅力的な登場人物達のお陰で夢中で読み進められました。凛々しくて強い由利子さんと、どこまでもイイヒトな葛西巡査のコンビがお気に入りです。
シリアスな場面が続くかと思えば、時々、ニヤリ、とほくそ笑むようなネタが仕込まれてて、飽きさせてくれません。


氷中花
 作者:白倉ひな 様
 掲載サイト:LOVE NOTE R18
タイトルどおり、冴え冴えと身を切るような寒さの中、それでも懸命に咲こうとする花のような物語です。
何も知らなかった行きずりの関係から、生徒と先生という禁断の枠組みの中に、そして更に思いもかけなかった複雑な運命のもとへと、放り込まれてしまう二人に、もどかしさとやりきれなさに身悶えしながら読み進めました。
脳裏にまざまざと浮かび上がるラストシーンの美しさには、ただただ感無量です。


籠女
 作者:さなぎ 様
 掲載サイト:emergence - R18恋愛小説 R18
センセーショナルな紹介文にちゃっかりしっかりノせられて、軽い気持ちで読み始めた私ですが、ほどなく目が画面から離せなくなりました。ハードな展開は目次で警告されたとおり、それはそれで大満足(*^^*)なのですが、同時に登場人物達の心の動きが、半端ない説得力をもって読み手を物語に引きずり込んでいくのです。
臨場感溢れる文章が描き出すカタルシス。そうして訪れる救済。読み終わった時には、しばし感動を噛み締めてしまいました。
この話の登場人物達を下敷きにした「翠の王国」というファンタジーバージョンも、サイトで連載中です。こちらは一転して穏やかな雰囲気の、でも切なさ溢れる物語となっています。


風花~かざはな~
 作者:久石ケイ 様
 掲載サイト:kuishinboの屋根裏部屋 R18
セピアシリーズという名のとおり、古い写真の中の風景のような、今はもう遠い時代を舞台に描かれるラブロマンスです。
身分差を乗り越えてゆっくりと近づいてゆく二人に襲い掛かる、数奇にして過酷な運命に、何度も息を呑み、胸を締めつけられる思いに苛まれました。名家に渦巻く狂おしいほどの愛情と憎悪に翻弄されながらも、おのれの信じる道を選んだ二人の姿が、とても美しいです。
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書籍

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『リケジョの法則』
¥647+税
発行:マイナビ出版

電子書籍近刊

『工作研究部の推理ノート 七不思議を探せ』表紙
『工作研究部の推理ノート 七不思議を探せ』
¥550
発行:パブリッシングリンク

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