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本日11/26に行われた
イセカイフドキさんの創作小説ワンライ企画「風土記系ワンライ」
3日目参加作です。
開催時間中に書けたところまで一旦投稿して、あとから少し加筆しました。どこをどう加筆したかは、掌編本文のあとに記しています。
※ワンライとは、制限時間一時間でお題に沿った作品を書き、決められたタグで投稿するX《ついったー》上でのイベントです。
伝統を重んじる人間や地位を剥奪された者達が聞けば烈火のごとく怒るであろうが、私は、帝国がこの地を征服したことを悪しからず思っている。一つは、子供達に読み書き計算といった基礎教育を施すことが義務づけられたこと。もう一つは、不安定かつ無軌道に膨張するばかりだった私塾を一箇所にまとめ、系統立った学問として成り立たせる道筋ができたことだ。
帝国以前は領主の城として使われていた建物の、古い石積みの壁を眺めながら、私は未来に思いを馳せた。おそらく後世の人間によって、今この時は歴史の新たな章の始まりと記されるであろう。歴史学者としては、その最初の一ページを、いかに有意義に……
「ちょっと、聞いてよ、ユエト!」
私の物思いは、甲高い叫び声で中断された。もう二十歳を過ぎているいい年だというのに、子供のような言動が目立つ学生、ユール・サラナンだ。教員室兼研究室に飛び込んできた彼は、先刻から黙々と文献を読み込んでいたもう一人の学生のもとへ真っ直ぐにやってくると、大きな音を立てて机の天板に手のひらを打ちつけた。
「政治学部のナントカって奴が、過去の納税方法について色々質問してきたから、ざっと教えた上で参考図書までまとめてやったのに、間違えてるんだよ!」
ちらりと学友を見やったユエト・サガフィは、視線だけで相槌を打つと、再び作業に戻る。勤勉な上に何事にも動じない、実に優秀な学生だ。
「人頭税を導入したのはアルサス領! だから隣のケネル領に吸収されるようなことになったんだって! さてはあいつ、一次資料に直接当たらないで僕の書き付けを適当に切り貼りしやがったな!」
一方、対照的にこぶしを振り回しながら口角泡を飛ばすユールだが、彼もこう見えて、とても優秀な学生なのだ……。時々信じられない思いに駆られてしまうが。
「だいたいだよ、あれこれ訊いてきたんだから、発表前に僕に『こんな感じになりました』ぐらいは報告に来たっていいと思うんだよ。んじゃ、こことこことこことここが間違ってて、ここからここまでの記述が変だ、って指摘することもできたのに!」
そこまで間違いが多いとなれば、まあ、彼の怒りはわからないでもないが……。
「そもそも質問に来た時からあいつは間違ってたんだよ。歴史ってのは、ルドスの歴史、とかヌルジの歴史、みたいにそれぞれが独立した紐みたいに存在しているわけではない、って言ったら、『それだとまとめにくいから、簡潔に頼む』って言うだろ。余計にややこしくなって混乱するよ、って忠告したら、『わかってるって。紐と紐で布地を編むようなものだろ』なんて、上手いこと言ってやった、みたいな顔していたけど、出来上がった布は穴だらけだし、それに、たった二本だけの紐を使って歴史を語れるわけがないんだよ!」
ああ、まったくもってそのとおりだ。だからこそ歴史を学ぶのは面白いのだ。いや、他の学問にしても同様だろう。我々ヒトという存在自体が、複雑怪奇極まりないのだから。一を聞いて解ったような気になるようでは、この先が思いやられる。
とは言え、いくらユールの意見が納得のいくものだとしても、学友の学びの邪魔をしてよいわけではない。私はトントンと指で机を叩いてから、依然滔々と語り続けている彼に話しかけた。
「ユール、君の考えは充分にわかったから、もうこれ以上ユエトに当たらないでやってくれ」
途端にユールがピタリと口をつぐんだ。珍しく素直に私の話を聞いてくれたのかと思いきや、しばしの沈黙を経て、なにやら思案深げに顎に手をやる。
「――いや、待てよ、織物だったら、沢山の縦糸を各々の地域に当てることができるな……?」
紐と布のたとえ話がまだ続いていたのか。
「その場合、横糸は何だ」
ユエトまでもが話題に加わってくる。しかしまあ、その気持ちはわかるとも。私も今ちょうど、横糸は何かな、と思ったところだ。
「んーと、時間の流れ……? いやでも、ちょっとそれには当たらないかな……」
私はそっと溜め息を吐き出した。当初の望みどおりユールが矛を収め、部屋の中が落ち着きを取り戻したからには、これ以上苦言を呈するわけにもいくまいて。
気を取り直した私は、愛弟子二人にあらためて正面から向き合った。今しがた考えついたばかりの譬えを、いそいそと披露する。
「ならば、組紐はどうだね」
二人の表情がパアッと明るくなるのを見て、私は満足感とともに大きく頷いた。
ふどらい企画三日目にして、ようやくワンライっぽいワンライができたような気がします。
と言っても制限時間内に完成させることはできず、最後のほうが台詞の羅列になってしまったので、あとから加筆修正していますが。
ちなみに加筆前の文章は以下のとおり。

オチに至る部分が全然足りてない。頑張ったんだけどなあ、一時間ではこれが限界でしたね……。
使用したお題は「当たらない」。
色んなバリエーションの「当たらない」を盛り込むつもりでしたが、結局3つしか入れることができませんでした。
1日目や2日目の経験を踏まえて、今回はまず台詞だけをオチまで書き出しました。
地の文は、視点が明確な一人称を選択。描写を絞ることができる代わりに、油断すると人物説明がとってつけたようになってしまいがちなところを、ユールというキャラの勢いのお蔭で、なんかこう上手いこと誤魔化せたように思えます……誤魔化せてたらいいなあ……。
このたび初めてワンライに挑戦しましたが、一時間って本当にアッという間に過ぎてしまいますね。
この短い時間にきっちりと作品に仕上げている方々には、ただひたすら尊敬するばかりです……爪の垢ちょっと分けて……。
大勢でわいわいにぎやかに時間やお題を共有して書くの、お祭りみたいでとても楽しかったです!
素敵な企画をありがとうございました!!
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夏にX《ついったー》で
#大切な人が眠り続ける呪いにかかりそれを解く条件が人を100人ころすことだとしたらうちの子はどうするというタグで遊んだ時の記録をまとめておきます。
オーリの例外事項について、「モウルのことを特別大切に思っているからではなく、モウルなら気にしないだろうと思っているからですね(要約)」とのリプライを受けて。
更に、「ウネン相手にどうしても実行しなければならない事態に陥ったら、業は全部自分で背負う覚悟ですね(要約)」とオーリへの信頼を寄せてくださいました。
別の方からはウルスとラグナに「そういうとこだぞ」的なコメントをいただきました。あと、オーリの重さwにも。
ちなみに、「呪われた当事者が喜ばないだろうから」枠のもう一人であるサンについては、相手をリーナに想定しての反応となっています。彼女の善なる部分に対する、圧倒的信頼感……。
他の人間がこの呪いにかかった場合、それが主君だったら「条件を粛々と実行する」、それ以外なら「良心が許さないから」かなあ。あ、でも、レイが相手だったら、「呪われた当事者にぶん殴られたくないから」という新項目が爆誕しそうな気がしますw
昨年末からの創作呟きをまとめましたー。
あとから振り返ると、別に壁打ちツイしなくても普通に呟いたらええやん、って思うんだけど。壁打ち使う基準が自分でもよくわからんな……。
風土記系競作企画「調」 参加作「
切々と望む」についてのこぼれ話をまとめました。
同一世界を舞台としている「九十九の黎明」本編を読了した方は、なぜ暦が「わかりやすい」のか察してくださるのではないでしょうか……。
明記していませんでしたが、「切々と望む」の時は、ユールもユエトも23歳です。
帝国がルドスに大学校を設置したのかというと……
上で何度かでてきた「世界が繋がっている」という話ですが、これについてはカクヨムのコレクション機能を使って一部の物語をまとめています。
「遥けき大地の物語」
同一世界を舞台とする物語です。
それぞれ独立した話となっていますので、好きなものから好きなだけお読みください。
(小説の並びは時系列順になっています)
今回の「切々と望む」も異風祝参加作「渡座の祈り」も、この世界を時間軸で切り分けただけで、他の話の番外編やスピンオフにならないように書いたつもりです。このリストにある物語を全部読まなくても問題ありませんのでご安心ください。
特に「九十九の黎明」はかなり時期が離れているので、読まなくても大丈夫な話の筆頭です。"始まりの物語"ではあるのでちょっと視界は広がるかもしれませんが。あと、ルドスという名の由来もサラッと出てきます。気がついた人いるかな……?
以上、こぼれ話にお付き合いくださりありがとうございました!
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「切々と望む」「切々と望む」こぼれ話ツイートまとめ風土記系競作「調」 参加作品の感想
いつも拍手をありがとうございます!
クリックいただくだけでもhappyなのに、コメントまで嬉しいです!!
>素敵な…… さん
ご高覧ご感想ありがとうございます!
気に入っていただけてすごく嬉しいです!! 頑張って書いてよかったです……。゜(つω`)゜。
風土記系FT小説のリンク集「異世界風土記」さん主催の
風土記系競作企画「調」に短編を書きました。
帝国の役人と、二人のわけあり学生による、古代遺跡調査行です。
「とある土地に関する調査報告書、またはそれにまつわる物語」というテーマに合わせて、享楽的な歴オタと、どこまでも一途な生真面と、そんな二人の若者に振り回されているけど実はそこそこ切れ者、な三人が、東の辺境にある「果ての沙漠」へと旅をする物語です。
→
「切々と望む」サイト版 →
カクヨム版(サイト版と同じ)
→
なろう版(地の文と台詞の間等に適宜空行有り)
二年前の
風土記系競作企画「祝」に
「渡座の祈り」で参加した際にも書きましたが、
「風土記系FT」というのは、「異世界の気候や地勢、そこで暮らす人々の生活に社会のありさま、文化文物を味わえる物語」のことです(ちなみに「異世界風土記」は、「管理人のヌーさんが個人的に風土記系FTを集めたリンク集の名前」=「ヌーさんのサイト名」だそうです)。
今回のテーマが発表された五月、脳内ですぐに一名の既存キャラが「調査!? はいはい! 調査行きたい!!」って立候補してくれまして、「あー、もうネタが決まっちゃったなー、楽勝だなー」なんて思っていた、んです、が。
せっかくのテーマ創作なんだから、きちんとド真ん中を狙って「報告書」を書こう、って思って色々こねまわしているうちに、重要なことに気がつきました。この立候補してくれた奴、報告書を書かせたら普通に真面目でまともなものを持ってくるんですよ。こいつの真価は、書類の中じゃなくて普段の言動にある……。
で、それならば、報告書と実際の出来事とを織り交ぜて書こう、と思ったんですが、当たり前のように文字数が足りなくなりました。こんなのプロットの段階で解る。絶対足りない。無理。
仕方がないので、他のネタをちょこちょこ探してみたんですが、なんというか、出てきたものがどれもオチが弱いんですよ。
覆面8の時にはっきりと自覚したとおり、私は「オチがつかなければ落ち着かない」どころか「オチがなければ出力できない」不器用人間でして、「ネタが上手くまとまらない~~」と床の上をごろごろ転がりながら(比喩)四箇月、報告書形式にこだわるのをやめてみたら、一番最初に思いついたあいつの物語がなんとか一万字に押し込めそうだと気がついたのでした。企画の募集要項に「それ(報告書)にまつわる物語」とも書いてくださってますし! 単なる読み物でも、企画に並ぶご馳走の隅っこのパセリぐらいにはなれるかも!
予期せぬタスクだのなんだので執筆時間が取れなくて、この二週間むちゃくちゃ頑張りました。何とか間に合って本当に良かったです。
上の段で「既存キャラ」と書きましたが、この短編は既存作の番外編やスピンオフではありません。既存作に登場したキャラではありますが、なんだろう、町や山や川なんかと同じ、物語世界に付属する存在を使用した、と言えばいいのかな……。
カクヨムでは、コレクション機能を使って「
遥けき大地の物語」としてまとめていますが、同一世界を舞台としているだけで、それぞれが完全に独立した物語になっているのでした。
とはいえ、既存作をお読みの方は、「こいつはもしや」って思われるかもしれません。そのあたり、もう少し落ち着いたらこぼれ話として幾らか書き出してみたいと思います~。
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書籍

『リケジョの法則』
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電子書籍近刊

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発行:パブリッシングリンク
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